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この記事では、予算に悩む工場の衛生管理者向けに、効果を落とさず管理費を浮かせ、それを改善に回すための具体的な手順を解説します。

【結論】

  • 防虫管理費は契約内容の見直しで削減できる場合がある
  • 削減した予算は設備改善や予防管理に回した方が長期的なメリットあり
  • 重要なのは費用削減ではなく異物混入リスクを下げること

防虫対策のコストは見直せる

食品工場では、異物混入防止や監査対応のために防虫管理を継続しているものの、「毎年同じ契約を更新しているだけ」というケースも少なくありません。

もちろん、防虫対策は食品安全上欠かせない取り組みです。しかし、必要性の低い作業や活用されていない管理項目にコストをかけ続けている場合もあります。

防虫対策のコストダウンで重要なのは、単純に予算を削ることではありません。

無駄な費用を減らしながら、効果を維持または向上させることです。

食品工場の防虫管理コストを削減するには、大きく次の3つの方法があります。

  1. 年間管理契約の仕様を見直す
  2. 予防管理型の防虫対策へ移行する
  3. 相見積を取得する

見直しの対象はモニタリングだけではありません。薬剤施工、作業分担、管理方法なども含めて、現在の契約内容が本当に最適かを確認することが重要です。

1. 年間管理契約の仕様を見直す

最初に見直したいのが、防虫管理の年間契約です。

長年継続している契約ほど、「以前は必要だったが現在は不要になった作業」が残っていることがあります。

まずは本当に必要な管理項目だけに絞れているか確認しましょう。

モニタリング業務を見直す

防虫管理では、ライトトラップやフェロモントラップによるモニタリングが一般的です。

しかし、収集したデータが十分活用されていなければ費用対効果は低下します。

例えば次のような見直しが可能です。

  • 捕獲データを分析・活用できているか確認する
  • 同定検査を省略できるポイントがないか検討する
  • トラップ交換を自社で実施できないか検討する

特に、毎月報告書は受け取っているものの、データを根拠にした提案がなかったり、改善活動に活用されていない場合は見直し余地があります。

モニタリングポイントを削減できる例

同じ部屋や通路に複数の捕虫器があり、どちらの捕獲傾向もほぼ同じ場合、片方の同定検査は削減しても問題は起きにくいでしょう。

捕虫器そのものを撤去してしまうと虫の捕獲力が下がりますので、捕獲状況によっては同定検査なしの捕殺専用として継続設置する選択肢もあります。

その場合、捕虫紙自体は目視で現場確認しますので、大きな問題があれば発見することは可能です(※トラップ点検作業を協力業者に委託している場合は注意)。

■モニタリングを活用した防虫対策はこちらでも解説しています。

関連記事:食品工場の防虫対策入門|「内部発生」と「外部侵入」の切り分け

■捕獲調査だけでは不十分になる「生息調査」の解説はこちら

関連記事:食品工場の防虫対策で取り組むべき生息調査 | MECEフレームワークで考える

薬剤施工を見直す

定期的な薬剤散布を実施している工場もありますが、重要なのは「実施していること」ではなく「効果が出ていること」です。

次の点を確認してみましょう。

  • 施工の目的が明確になっているか
  • 施工前後で効果検証が行われているか
  • 定期施工ではなく必要時のスポット施工に変更できないか
  • 自社施工が可能な内容ではないか

目的や効果が不明確なまま続いている薬剤施工は、コスト削減候補の一つです。

薬剤施工をコストダウンできる例

以前はゴキブリの生息が多く年に数回大規模な殺虫施工をしていたが、最近はほぼ生息がなくなった、という場合、定期施工の回数は削減できる可能性があります。

また、外周の薬剤散布は効果検証が難しいわりに薬剤費が高く、散布場所や薬剤をしっかり選定すればコストダウンできるケースがあります(例:発生源になりにくいコンクリート面への一律散布をやめ、砂利や草むら、入出荷口に集中する等)。

一部自社作業(施工)への切り替え

「自分たちでちゃんとできるかな」「防虫の教育訓練が必要になるかな」と不安に思うかもしれません。

自社施工に向いている業務

  • トラップ交換
  • 外周薬剤散布

自社施工に向いていない業務

  • 同定検査
  • 認証工場の薬剤施工
  • 原因分析

まずはトラップ交換作業から

もっとも手軽にコストダウンできるのが、知識・技術が必要ない単純作業のトラップ交換です。回収したトラップは保護フィルムを貼って保管し、後日防虫業者に確認してもらいます。

防虫業者がトラップ点検作業を2名以上で実施している規模の工場であれば、作業人員を減らせるため大きなコストダウンになるでしょう。

トラップ数十カ所の現場でも慣れれば1~2時間程度で終わります。工場規模や契約内容によって異なりますが、年間で数万円から数十万円程度のコストダウンになるケースもあります。

薬剤施工は内容を絞って選ぶ

外周の薬剤散布は駆除というよりも予防を目的としており、マニュアル化しやすい作業です。

仕様設計と最初のレクチャーは防虫業者にしてもらい、あとは真面目に取り組むだけです。

教育訓練について

取得している認証規格により少し変わってきます。

  • FSSC22000認証工場: 薬剤施工の教育訓練と記録が必須。管理コストやリスクを考えると、専門業者へ委託し続ける方が結果的に安価な可能性あり。

  • 非認証工場: 自社施工も可能だが、安全かつ効果的に行うには相当な教育リソースが必要。

2. 予防管理型の防虫対策へ移行する

防虫管理で最もコストがかかりダメージも大きいのは、虫が大量発生してから対応するケースです。

発生後に駆除や設備改善を行うよりも、発生しにくい環境を作る方が結果的に安く済みます。

そのためには、予防管理型の防虫対策が重要です。

設備面(ハード)を強化する

設備や環境に問題があると、同じトラブルが繰り返し発生します。

例えば次のような改善が有効です。

  • 「清掃できません」が発生しない設備や道具へ改善する
  • 陰圧を緩和するための給気経路を確保する
  • 何度も補修を繰り返さない耐久性の高い資材を選ぶ

一時的な対策よりも、問題を繰り返さない設備改善の方が長期的なコスト削減につながります。

改善事例

  • グレーチング(排水側溝の金網フタ)が重くて清掃できない → 軽量な樹脂グレーチングに
  • 機械下が狭くてブラシが入らない → 薄型直角ヘッドの機械下用ブラシ
  • 換気扇フードの防虫メッシュが粗い。細かいと目詰まり → 脱着容易な外付け防虫メッシュ

外部リンク:防虫・衛生ブラシメーカー 株式会社バーテックHP

外部リンク:グレーチング・建材メーカー 株式会社ダイクレHP

従業員の防虫意識(ソフト)を高める

防虫対策は設備だけで成立するものではありません。

日常管理を行う従業員の理解と行動が大きく影響します。

  • 4M変化点管理を活用して異常を未然に防ぐ
  • 防虫清掃のポイントを理解する
  • 対象害虫の発生サイクルに合わせて清掃頻度を調整する
  • 掲示物や朝礼で継続的に注意喚起する

虫が増えてから対処するのではなく、増えない状態を維持することが結果的に最も安価な対策になります。

■4M変化点管理は、問題が発生しそうな場面・タイミングを明確にする考え方で、予防の仕組み作りには欠かせません。

関連記事:食品工場の防虫管理に活かす4M変化点管理|問題の早期解決と予防の仕組み

■総合的な防虫対策の考え方の解説はこちら

関連記事:効果的な害虫対策の考え方【IPM】

3. 相見積を取得する

防虫管理を長年同じ業者へ依頼している場合は、相見積りも有効な選択肢です。

相見積の目的は、単純な値下げ交渉ではありません。

現在の管理内容が本当に適切なのかを客観的に確認することです。

ゼロベースで仕様を見直す

防虫管理契約は、一度決めた仕様が毎年引き継がれる傾向があります。

そのため、現状に合わない管理項目が残っていることがあります。

相見積を取得することで、現在の仕様をゼロベースで見直すきっかけになります。

単価や提案内容を比較する

同じ防虫管理でも、業者によって考え方や提案内容は異なります。

料金だけでなく、次のような点も比較しましょう。

  • 管理内容の妥当性
  • 改善提案の質
  • 報告書の活用しやすさ
  • 教育や現場支援の内容

また、業者側としては年間契約の売上を維持したい心理が働くため、必要性が低くなった仕様でも削減提案が出にくい場合があります。

第三者の視点を入れることで、見直しポイントが見つかることもあります。

さらに、同じ管理仕様でも業者によって価格差が生じることがあります。これは人件費だけでなく、トラップや薬剤などの資材費設定の違いも影響します。

防虫業者の選び方

害虫駆除という仕事は、弁護士や自動車整備士のような法律上の資格制度がありません。事業者や担当者によって知識・経験・意欲の差が大きい業界です。

また、人間が調査・分析・提案するサービス業のため、どの業者かというよりも、自社に来る担当者がどんな人かによってサービスレベルが大きく変わります。

防虫管理を最適化するためには「専門業者だから専門知識があるだろう」と妄信せず、根拠・説得力のある説明・提案をしてくれるのか、資格取得など勉強している人なのか、などを確認して業者選びをすることを強くお勧めします。

防虫対策のコストダウンは工場のレベルアップとセットで考える

防虫対策は、業者へ費用を支払えば完成するものではありません。

工場自身が防虫レベルを高めることで、初めて安定した管理が実現できます。

設備改善や従業員教育に力を入れれば、外部委託に依存しすぎない体制を構築できます。

その結果、管理コストを抑えながら高い防虫効果を維持できるようになります。

コストから投資へ

防虫管理は問題の発生予防がベストですが、そうした体制作りには手間や費用がかかります。

まず年間管理契約の仕様を見直してコストダウンを図り、浮いたお金で予防管理の体制を構築していく、という考え方が長期的に見て費用対効果の良い取り組みではないかと思います。

防虫業者に払うお金はコストですが、自社工場の財産になるものは投資と言えるでしょう。

モニタリング調査は目的ではなく手段。優先すべきは改善

改善があまり進まない工場の大きな理由として「予算が足りない」があります。

有害生物モニタリングは、工場を人間に例えれば健康診断のようなものですが、健康診断で問題が見つかったのに、健康診断の費用が高くて治療費が出せない、それでは本末転倒ですよね。

防虫管理においても、高額なモニタリング(健康診断)契約を維持するのに予算を使うのではなく、改善活動(治療・予防)に回すお金を増やすべきです。

「限られた予算をどう使って虫の異物混入リスクを減らすか」という軸をブレさせずに、防虫管理契約の見直しに取り組みましょう。

よくある質問

防虫管理のコストダウンで最初にやることは?

現在の防虫業者に「見直しできそうな管理項目はないか」を相談してみましょう。御社の考えも伝えてディスカッションし、いまいち納得できなければ他業者に提案を求めましょう。

トラップ交換を自社で行う場合の注意点は?

トラップ番号を間違えずに設置していく作業の正確さです。分かりやすい図面の作成や、トラップ設置場所をラベル表示するなど、最初はひと手間かけて体制作りした方がよいです。

ゴキブリ対策で最小限の薬剤施工はどのくらい?

クロゴキブリであれば発生サイクルが約6か月~ですから、年1~2回でしょう。捕獲や目撃が無く、発生リスクが低いと判断される状況なら、定期的な薬剤施工をする必要は薄いと考えられます。チャバネゴキブリは発生サイクルが約3か月で、対策は異なります。

FSSC22000認証工場でも自社施工は可能ですか?

教育訓練を実施し記録を正しく残していれば可能です。ただし、どのようなやり方ならFSSC22000の審査で「適合」とされるかは防虫業者では明言が難しく、規格のコンサルタントに確認が必要です。不安があれば無理に自社施工しない方がよいでしょう。

予防管理型の防虫対策で一番大事なことは?

人の防虫意識です。「虫が増えたらダメだよね」という意識がたくさんの人にあれば、予防につながる知恵が集まり、ルールも守られます。逆に、防虫意識がなければルールや仕組みを作っても実行されず、予防は難しいでしょう。必要な専門知識は防虫業者がフォローします。

従業員の防虫意識を高めるためには?

朝礼などを活用して頻繁に話をすることだと思います。それと、従業員から防虫の改善提案があったときに「言ってもムダ」とならないよう、(全部は難しくても)少しでも取り入れて前進させることです。みんなが「自分事」として取り組む機会を増やすことが大切です。

まとめ

防虫管理費のうち、どこに無駄があるかは工場ごとに異なります。まずは捕獲データ・薬剤施工履歴・改善履歴を整理し、現在の契約内容が目的に合っているか確認してみましょう。

食品工場の防虫対策をコストダウンする方法は次の3つです。

  • 年間管理契約の仕様を見直す
  • 予防管理型の防虫対策へ移行する
  • 相見積を取得する

防虫管理仕様の見直しで特に重要なのは、「何を削るか」ではなく「何を残すか」という視点です。

防虫管理の目的は虫の捕獲数を数えることではなく、異物混入を防ぎ、安全な製品を安定して生産することです。

現在の契約内容を振り返り、手段が目的化していないか、従業員の知識や現場の管理レベルがどれだけ向上しているかを確認してみてください。

もし「毎年同じ作業を繰り返しているだけ」になっているのであれば、防虫管理の仕様そのものを見直すタイミングかもしれません。

防虫対策の取り組みは、上手に使えば自社工場の有形無形の財産になります。

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