鹿児島の暮らしとビジネスを有害生物から守る ベネール環境サービス

099-800-8410

食品工場の防虫管理で、防除が難しい害虫のひとつに貯穀害虫のシバンムシが挙げられます。今回は食品工場で問題になりやすいシバンムシ類の生態と、発生源調査・清掃・環境改善を中心とした対策について解説します。

シバンムシ対策は薬剤よりも発生源対策が重要です。成虫は駆除できても、幼虫は粉の中で育つためです。まずは発生源を特定し、清掃・環境改善を進めましょう。

食品被害を防ぐために知るべきシバンムシ類の基礎知識

食品を扱う現場では、気づかないうちに小さな虫が混入することがあります。なかでもシバンムシ類は乾燥食品を中心に発生しやすく、早い段階で特徴を把握しておくことが重要です。まずは生態や発生条件を整理し、なぜ食品被害につながるのかを理解していきます。

シバンムシ類の種類と特徴

シバンムシ類は成虫で体長おおよそ2ミリから3ミリほどの小さな甲虫で、赤褐色や茶色をしています。幼虫はカブトムシの幼虫を小さくしたような形状で、乳白色をしています。代表的なものにタバコシバンムシやジンサンシバンムシがあり、いずれも乾燥した食品を好む点が共通しています。成虫は飛翔するため、発生源から離れた場所にも広がりやすい性質があります。

タバコシバンムシとジンサンシバンムシは別の虫ですが、対策は似ているため当記事ではあまり区別せず「シバンムシ類」として扱っています。

※フェロモントラップでは明確に種類を分ける必要があります。タバコシバンムシ用のフェロモントラップではジンサンシバンムシは捕獲できません。

発生しやすい食品と環境

乾燥食品が主な発生源になります。具体的には小麦粉、香辛料、乾麺、ペットフード、乾燥野菜などが挙げられます。清掃しきれなかった食品残渣は発生源になりやすく、製造ラインに発生源があれば異物混入リスクは高くなります。

発生源は製造ラインにあるとは限らない

シバンムシの発生源は、目に見える床面よりも、普段清掃しない高所や壁内・天井裏にあることが少なくありません。

  • 高所に舞い上がった粉

  • わずかな隙間から壁内に入り込んで堆積した粉

これらがまとまった発生源となり、成長した成虫が再び隙間から製造エリアに出てくるため、「清掃しているのになぜトラップに捕まるのか?」という発生源が分からない状況が生まれやすくなります。

卵から成虫までの成長サイクル

メスは一度に数十個の卵を幼虫の餌になるものに産みつけます。卵は数日から1週間程度で孵化し、幼虫は成長しながら潜り込んでいきます。その後、蛹を経て成虫になりますが、環境条件が整っている場合はおよそ1か月から2か月で世代交代が進みます。

活動が活発になる温度と条件

気温が上がる時期になると活動が活発になります。特に25度前後の環境では産卵や成長が進みやすくなります。一方で15度を下回るような低温環境では活動がかなり鈍ります。

温度管理も対策の一つにはなるのですが、シバンムシ類が問題になる食品工場は製造品目の特性上、室温は高めなことが多く、温度管理による発生予防は現実的ではないかもしれません。

一般的にタバコシバンムシは5月前後と10月前後に発生が多くなると言われますが、その年の気候や、現場環境によってはそれ以外の時期でも多く見られます。

※シバンムシ類の生態について 参考外部リンク:国際衛生株式会社HP 虫図鑑

シバンムシ対策の基本となる初期対応

被害や生息が確認された段階では、広がりを抑えるための初動が重要になります。発生源を見極めたうえで、適切に処理と清掃を行うことで、その後の対策の効果も安定しやすくなります。ここでは現場で実施しやすい基本対応を整理します。

発生源の特定と隔離

はじめに行うのは、どこで発生しているかの確認です。まずは各シバンムシ専用のフェロモントラップを複数設置して問題個所の絞り込みを行います。捕獲が多い場所をおおよそ絞り込めたら、そこを中心に目視調査を徹底します。

シバンムシ類の幼虫は目視では見つけにくく、目視調査は根気のいる作業になるため、最初に捕獲調査を実施して重点的な調査範囲を絞り込むことが重要です。発生が認められた物や疑われる物は分けて保管し、移動による拡散を防ぎます。発生源が複数ある場合もあるため、周辺も含めて広く確認することが大切です。

捕虫器は補助的な調査手段

紫外線誘虫ランプの捕虫器でも捕獲は可能です。しかし、経験からはフェロモントラップほどの捕獲は期待できません。

捕虫器で捕る場合は、直射光よりも反射させたUV-LEDによく誘引されるという報告があります。私の経験からも、これは大きな要素だと思います。よくある水平に捕虫紙をセットするタイプの捕虫器より、半円上に大型捕虫紙をセットするタイプの方がタバコシバンムシの捕獲は多いです。

外部リンク:J-STAGE 『タバコシバンムシLasioderma serricorneは直射ではなく反射UV-LEDによく誘引される』日本応用動物昆虫学会誌 2014 年 58 巻 2 号 p. 133-135 宮竹 貴久ら

周辺設備の清掃と洗浄

発生源を除去した後は、周囲の清掃が欠かせません。棚の隙間や床の継ぎ目、機械の下部など、普段見えにくい場所に粉状の残渣が残っていることがあります。掃除機やブラシを使って細部まで取り除き、必要に応じて洗浄を行います。

捕獲強化や薬剤による成虫の駆除

幼虫は発生源の清掃とともに除去できますが、すでに移動してしまった成虫も駆除すべきです。成虫は幼虫のように粉塊の内部に穿孔しているのではなく、室内の空間にいることが多いですから、捕虫器やフェロモントラップによる物理的な捕獲や、缶タイプ燻煙剤等による空間殺虫処理でも駆除が可能です。

これまでフェロモントラップ等による生息調査が不十分だった場合は、定期的なモニタリングポイントとして監視対象に加えることで再発防止につながります。

なお、フェロモントラップはオスしか捕獲できず、メスが減らないため根本的な解決は困難です。

シバンムシ対策における環境改善のポイント

初期対応が終わったあとに重要になるのが、発生しにくい環境づくりです。シバンムシは餌と温度が揃うことで増えるため、日常管理の見直しが再発防止につながります。設備や清掃を中心とした運用の細かな点を整えることが、長期的な被害抑制に役立ちます。

清掃頻度と残渣管理の見直し

まず意識したいのが、食品残渣を残さないことです。床や棚だけでなく、機械の内部や裏側、搬送ラインの下などにも粉や破片が溜まることがあります。シバンムシ類の発生サイクルは1~2か月ですから、発生源になるリスクがある箇所は、月1回程度リセット清掃することで発生予防になります。どこを重点的に確認するかを明確にすることで、発生源を減らしやすくなります。

残渣が溜まりにくい設備・運用改善

清掃が有効とはいっても、小麦粉など飛散しやすいものを取り扱う場合、かなり広範囲の清掃が必要になり、現実的に難しいこともあります。そこで重要なのが、できるだけ粉などが溜まらないようにし、清掃の範囲を狭めることです。

設備改善としては、穴や隙間を塞いだり、凹凸を減らすことが大事です。床すれすれに設置されている機械や棚は、高さを上げて日常清掃で簡単にリセットできるようにしましょう。

運用改善としては、高所清掃用ブラシを導入して日常的にさっと粉を払ったり、長期間使わない設備や器具は製造エリア外に保管することなどが考えられます。清掃実施日を「見える化」したり、現場担当者への声掛け、要注意ポイントの掲示なども有効です。

保管方法と在庫管理の工夫

一方で、保管方法の見直しも欠かせません。開封済みの原料は密閉し、長期間放置しないように管理します。先入れ先出しを徹底することで、古い在庫が残ることを防ぎます。また、定期的に中身を確認することが重要です。

侵入経路の遮断対策

加えて、外部からの侵入を防ぐことも重要です。シバンムシ類は内部発生しますが、元々はどこかから侵入してきています。屋外の自然環境はもちろん、工業団地にある工場では近隣の工場や倉庫で増えたシバンムシ類が侵入してくることもあります。窓や出入口の隙間、換気口などからの侵入に備えて、防虫ネット設置や隙間の補修を行います。

シバンムシ駆除に有効な方法と機器

環境改善とあわせて、状況に応じた駆除手段を選ぶことも大切です。発生規模や場所によって適した方法は異なるため、それぞれの特徴を理解しながら組み合わせていきます。ここでは代表的な手段と現場での使い分けを整理します。

薬剤を使用した駆除の考え方

一般的に薬剤による処理は、成虫や幼虫の数を短期間で減らす際に用いられます。残効性のある薬剤を隙間や発生箇所に処理することで、再発の抑制にもつながります。しかし、シバンムシ類を対象に使う場合は、成虫には効果が見込めますが、幼虫は薬剤が届きにくい狭所や食品残渣の内部に生息していることが多いため、高い駆除効果を得られないことがあります。

また、シバンムシ類が問題になるような製造現場では水や洗剤を使ったライン洗浄が難しいことがあり、殺虫成分や臭いの残留が懸念されるため、使用できる薬剤の場所・タイミング・種類・量が限られます。倉庫や壁内・天井裏など薬剤を残留させておくことが可能な場所であれば、幼虫対策としてIGR(昆虫成長抑制剤)を中心とした薬剤処理は有効ですが、製造エリア内において薬剤を中心にした方法でシバンムシ対策を進めるのは、総じて難しいように思います。

加熱処理による駆除方法

一方で、薬剤を使わない方法として加熱処理があります。空間全体を高温にすることで、卵や幼虫を含めて死滅させる方法です。

たとえば専用機器を用いて室温を一時的に50度以上まで上げる方法では、食品残渣や設備内部に潜む個体にも効果が及びます。設備への影響やコストを考慮しながら計画的に実施することが求められます。

ヒートガンなど局所処理の活用

空間全体への高温処理が難しい場合や、問題個所が絞り込まれている場合は、局所的にヒートガンのような高温風を当てる機器が使われます。棚の隙間や機械の接合部など、ピンポイントで処理できる点が特徴です。熱を直接当てることで、その場にいる虫を処理できるため、清掃と組み合わせて使うことで効果が安定します。火傷や設備への影響に注意しながら扱う必要があります。

捕虫器やトラップの役割

光学式捕虫器やフェロモントラップは発生状況の把握に役立ちます。設置した場所ごとの捕獲数を確認することで、どこに問題があるかを見つけやすくなります。性フェロモンを利用したフェロモントラップは成虫のオスしか捕獲できませんが、食餌誘引剤を使用したトラップではメスも捕獲できます。

交信かく乱剤の導入

性フェロモンを拡散させてオスとメスの出会いを妨害し発生数を抑制する、交信かく乱剤もあります。使用には注意点があります。

1つ目は、直接的な殺虫はしない点です。

2つ目は、完全に妨害できていない可能性がある点です。いずれ出会ってしまうなら発生数は大きく減少しないでしょう。

3つ目は、フェロモントラップでの捕獲に影響する点です。交信かく乱剤はフェロモントラップのルアーと同じようなもののため、トラップでの捕獲数は減少するかもしれません。しかし、捕獲減少が生息数の減少によるものか、フェロモントラップに誘因されなかっただけなのか、判別が困難になります。

本当の生息数が分からないまま捕獲数だけを見て「減少した」と判断してしまうと、必要な対策を打つタイミングを逃してしまい、本来の目的であった異物混入リスク低減につながりにくくなります。交信かく乱剤は、生息密度を低くする殺虫や捕獲、環境改善と併用することで、効果的に活用できるでしょう。

食品工場で行うシバンムシ対策の管理体制

日常的な管理体制を整えることで、発生の兆候を早い段階で把握しやすくなります。単発の対応にとどまらず、継続的に確認と見直しを行う仕組みづくりが、安定した衛生状態の維持につながります。

モニタリングによる早期発見

まず取り入れたいのが、定期的なモニタリングです。トラップの設置場所を決め、一定間隔で捕獲状況を確認します。数の変化や発生箇所の偏りを記録することで、異常の兆しを把握しやすくなります。捕獲されにくい初期段階でも、継続的な確認が早期発見につながります。

防除基準の設定と判断の統一

あわせて、防除の基準をあらかじめ決めておくことも重要です。どの程度の捕獲数や目撃が確認された場合に対策を実施するのかを明確にすることで、対応の遅れや判断のばらつきを防ぎます。現場ごとに基準を共有しておくことで、誰が見ても同じ判断ができる状態になります。

モニタリングデータは過去から継続して取得していますから、まとまった手間や費用がかかる対策は「今年増えてから」ではなく「増えそうな時期に」実施するよう計画を立てておくべきでしょう。

冬~春のリセット清掃と設備改善

春にシバンムシ類の活動が再開される前に、高所リセット清掃や、壁・天井のコーキングなどを集中的に実施すると効果的です。食品の微生物制御で初発菌数を抑えるのと同じように、春の活動開始時に数を減らしておけば、夏にかけて増加していくペースが緩やかになります。

従業員教育と衛生意識の共有

現場で働く人の理解も欠かせません。シバンムシ類の特徴や発生しやすい場所、初期兆候を共有することで、小さな異変に気づきやすくなります。清掃のポイントや保管方法についても具体的に伝えることで、日常作業の中で対策が自然に行われるようになります。

特に粉物を扱う工場で行われる「エアー吹き清掃」には注意が必要です。機械の下などに固着した粉はエアーだけでは除去しきれず、シバンムシの幼虫が床に強くしがみついていることもあります。 マニュアルの整備だけでなく、以下の運用を徹底できるよう現場教育を行います。

  • エアー清掃後の仕上がりチェック(本当に除去されたか目視確認)

  • 飛ばした残渣の確実な回収・廃棄(別の場所に移動させただけにしない)

記録管理と継続的な見直し

実施した対策や発生状況を記録することが大切です。過去のデータを振り返ることで、発生しやすい時期や場所の傾向が見えてきます。その情報をもとに、清掃方法や設備の改善点を見直すことで、より効果的な管理につながります。また、定期的なリセット清掃が必要な発生リスクの高い場所は、清掃実施日や次回予定日をその場に記入できるようにして「見える化」すると、うっかりミスがなくなります。

防虫業者に求められるシバンムシ対策サポート

シバンムシ対策の中心は、発生源となる食品残渣の除去です。しかし現実的に100%の清掃は難しいため、場所やタイミングを絞り込んだ対策が必要です。そして、それらのアドバイスを行う防虫業者にも、高いレベルの注意力と実行力が求められます。

清掃不足になる原因を取り除く改善提案

シバンムシ類が増える背景には、食品残渣が長期間残る環境があります。再発防止のためには、「清掃してください」で終わりにするのではなく、清掃不足になってしまった原因を取り除く必要があります。作業者の怠慢のせいにするのではなく、できなかった理由を推察し、ディスカッションし、清掃しやすい環境作り、仕組みづくりが必要です。

隙間塞ぎは直接サポート

室内の隙間をコーキングなどで閉塞することは重要です。壁内や天井裏で発生したシバンムシ類が室内に出てくることを防ぐとともに、室内から粉などが壁内などに入り込んで発生源になることを防ぐためです。壁内や天井裏が主な原因であれば、製造室内をいくら清掃しても効果はあまり出なくなります。

ちょっとしたコーキングは防虫業者がやっておいてくれるとスムーズです。改善活動は「誰がやったか」ではなく、「何がなされたか」です。

食品残渣からの生育調査

堆積した粉の中にシバンムシ類が生息しているのかは、ちょっと見た目では分かりません。卵や若齢幼虫を肉眼で発見するのは難しく、それらを顕微鏡で全て見ていくのも現実的ではありません。そこで、その食品残渣を保温庫に入れ、シバンムシ類が発生してくるか観察することができます。小さな卵から成虫になるまでは1~2か月かかるため即効性のある調査ではありませんが、長期的な防虫管理の中では、リスク箇所を絞り込み、場所ごとの優先順位をつけることは重要です。

現場従業員向け講習会による知識と意識のレベルアップ

シバンムシ類は一般的に知られた昆虫ではなく、まず現場従業員に知ってもらう必要があります。知識がなければ、タバコシバンムシの幼虫が床に落ちていても、問題に気が付くことができませんし、防虫業者が問診しても十分な情報を得ることは難しくなります。

講習会では一般論だけでなく、清掃不足になりやすい所、過去の発生源などを説明します。現場従業員が「自分事」として取り組めるようサポートする必要があります。製造現場の担当者が変更になった時は、引継ぎはもちろん、個別にミニ講習会を実施した方がよいかもしれません。

担当者や設備などの変化があった時の注意点はこちらで解説しています。

関連記事:食品工場の防虫管理に活かす4M変化点管理|問題の早期解決と予防の仕組み

まとめ

シバンムシ対策では、薬剤よりも発生源対策が重要です。

  • シバンムシ対策は発生源の除去が最重要
  • フェロモントラップや捕虫器で発生源を絞り込む
  • 清掃しやすい環境づくりが再発防止につながる
  • 壁内や天井裏など見えない場所が発生源なることもある

ゴキブリなどと異なり、薬剤によるリセット駆除が極めて難しく、日頃の清掃や改善活動、従業員教育が対策の成否を分けます。これらは「がんばる」というよりも「仕組み作り」が重要です。

様々な方法を組み合わせた害虫対策の考え方はこちらで解説しています。

関連記事:効果的な害虫対策の考え方【IPM】

お問い合わせはこちら