食品工場では、製品への薬剤混入リスクやライン洗浄の手間から、通常は殺虫剤を使いにくい環境です。そのため、ゴキブリがいても「気になる場所へすぐに薬剤を散布する」という対応は簡単にはできません。
そこでおすすめなのが、お盆などの長期連休を利用した薬剤施工です。製造ラインが長期間停止する時に施工することで、安全性を確保しながら効率よくゴキブリを駆除できます。
この記事の結論
- 夏季連休は食品工場で最もゴキブリ駆除に適したタイミング
- ゴキブリの発生状況や予算に応じて3種類の施工方法を使い分ける
- くん煙剤だけではなく、液体殺虫剤を組み合わせることで駆除効果が高まる
食品工場の衛生管理は年々向上しており、ゴキブリに悩む工場は多くないと思います。しかし、ひとたび問題が起きればダメージがとても大きいですから、楽観視し過ぎずに対策を検討しましょう。
なぜ夏季連休の薬剤施工がおすすめなのか
お盆前後の長期連休は、食品工場でゴキブリ駆除を行う最も良いタイミングです。その理由は主に3つあります。
① 連休明けに製造ラインを清掃できる
薬剤施工後は、製造設備やラインの清掃を実施してから生産を再開できます。
薬剤の残留や死骸を取り除いた状態で操業できるため、食品工場でも比較的実施しやすい施工時期といえます。
② 夏はゴキブリの活動が活発になる
ゴキブリは気温が高いほど活動が活発になります。夏場は夜間に巣から出てきて徘徊する個体が多くなるため、床面へ処理した残効性殺虫剤に触れる確率も高くなります。連休で期間が長ければさらに効果的です。
つまり、まちぶせタイプの薬剤の効果を発揮しやすい季節なのです。
③ 翌年まで個体数を抑えやすい
8月に生息していた成虫・幼虫をリセット駆除すれば、(理論的には)それ以降にいるゴキブリは卵から孵化した若齢幼虫だけになります。若齢幼虫から成虫になるのは数か月かかり、冬の休眠期間をはさめばもっと長くなります。
成虫にならなければ繁殖しませんから、成虫になる前に駆除する猶予期間が長くなり、内部発生で増える個体数を大きく減らすことができます。年間を通じたゴキブリ管理にも効果的です。
施工するタイミング
薬剤施工は、次のどちらかのタイミングがおすすめです。
- 連休直前日の終業後
- 連休初日の昼間
製造終了後すぐに施工することで、連休中に十分な駆除時間を確保できます。
食品工場でおすすめの薬剤施工3パターン
① 残効性液体殺虫剤のみを散布する「お手軽パターン」
狙い
床面や壁際などへ忌避効果のない残効性液体殺虫剤を散布し、夜間に徘徊するゴキブリを駆除します。
施工者
防虫業者による施工がおすすめです。お客様ご自身でも薬剤を購入すれば施工できますが、散布場所や散布範囲は防虫業者へ相談した方が効果的です。
メリット
- 比較的安価に施工できる
- 事前準備が不要
- 製造ラインに薬剤が付着しない
デメリット
- 巣から出てこなかった個体には効かない
- 薬剤処理面を歩かなかった個体は生き残る
- 床面が濡れていると効果が低下しやすい
適した状況
ゴキブリの生息リスクが低く、「念のため施工しておこう」という予防的な管理に向いています。
② 残効性液体殺虫剤+缶タイプくん煙剤「安価にしっかりパターン」
液体殺虫剤を散布した後に、追い出し効果のある缶タイプくん煙剤を使用します。
狙い
機械内部や操作盤内などからゴキブリを追い出し、液体殺虫剤を散布した場所へ誘導することで駆除率を高めます。
施工者
防虫業者による施工がおすすめです。お客様ご自身でも施工できますが、薬剤選定や散布場所は専門業者へ相談すると安心です。
防虫業者は防毒マスクを持っているため、くん煙剤でゴキブリがどこから出てきたか目視で確認可能です。また、煙感知器のスイッチを切る場合は、防虫業者に換気までしてもらうと煙感知器の再セットまででき、安心して夏季連休に入ることができます。
メリット
- 比較的安価に施工できる
- 追い出すためゴキブリの行動任せでなくなる
- 液体殺虫剤単独より駆除効果が高い
デメリット
- 製造ライン全体へ薬剤が付着する
- 養生すると駆除効果が低下する
- 壁内や狭い隙間など煙が届かない場所は駆除しにくい
適した状況
ゴキブリが多少生息している可能性があり、できるだけ費用を抑えながら駆除効果を高めたい場合に適しています。
③ ガス施工+速効性液体殺虫剤「強制的にリセット駆除パターン」
缶タイプくん煙剤ではなく、二酸化炭素を利用した殺虫ガスを使用します。
狙い
壁内や機械奥などの狭所まで薬剤を行き渡らせ、施工範囲全体をリセットするような駆除を行います。夜間にゴキブリが出てくるかどうかという確率に頼らず、強力なピレスロイド系殺虫ガスで強制的に追い出して駆除します。
施工者
専門の防虫業者が施工します。
メリット
- 壁内や機械内部などにも高い効果が期待できる
- 最も駆除能力が高い施工方法
デメリット
- 施工費用が高額になる
- 製造ライン全体へ薬剤が付着する
適した状況
ゴキブリの生息リスクが高く、短期間で大幅に個体数を減らしたい場合に適しています。また、生息リスクが低い工場でも、「本当にゼロを維持できているか確認したい」という目的で実施されることがあります。
施工後の評価方法
どの施工方法でも、施工後の評価が重要です。
死骸が確認されなければ、ゴキブリはほとんど生息していないと判断できます。
(※死骸は見えにくい箇所にあったり、幼虫はお客様では発見・判別できないこともあります。できれば防虫業者と一緒に確認した方が確実です)
一方で死骸が見つかった場合は、発見場所・個体数・種類などを確認し、必要に応じて追加処置を検討します。
なお、ゴキブリの卵鞘(卵)は薬剤の影響を受けません。
そのため、ガス施工で大量に駆除できた場合でも、その後に卵から孵化した幼虫が成長してくる可能性があります。
2回目の追加施工について
8月にこの施工を行って成虫の死骸が複数見られた場合、卵鞘が残っていると考えるべきです。クロゴキブリの卵期間は40日前後とされており、成虫になるまでは数か月~1年近くかかります。
このクロゴキブリの生態を踏まえると、8月半ばに施工したのであれば、10月半ばから翌年3~4月までの間に2回目の追加施工を実施し、卵から孵化した幼虫が成虫になる前に駆除する必要があります。それをしないとまた成虫になって内部発生が続いてしまいます。
真冬は活動が低下して追い出し効果が弱まることがあるため、秋か春に実施した方がよいと思います。できれば11月前半に実施して年を越した方が安心ですね。
なお、残効性の液体殺虫剤を散布しただけでクロゴキブリの成虫の死骸が複数見られるようであれば、生息数はまだ多いかもしれません。「死骸が出たから駆除できた」ではなく、「このやり方で駆除できたのは氷山の一角だから、生息調査と駆除を強化しよう」と考えた方がよいです。
くん煙剤だけではなく液体殺虫剤を組み合わせるのがおすすめ
食品工場では、夏季連休に缶タイプのくん煙剤だけを使用するケースも少なくありません。
しかし、くん煙剤だけでは煙が届かない場所にいるゴキブリや、一時的に逃げ延びた個体が生き残る可能性があります。
そのため、残効性液体殺虫剤をあらかじめ散布したうえでくん煙剤を使用すると、追い出されたゴキブリが薬剤処理面を歩くため、駆除効果をさらに高めることができます。
工場のゴキブリ発生状況や予算に応じて施工方法を選択し、長期連休を有効活用して衛生レベルの維持・向上につなげましょう。
ベイト剤(毒餌)について
ベイト剤も一定の効果がある駆除方法ですが、次の理由により夏季連休でのおすすめ施工からは除外しています。
- 夏季連休でなくてもできるから(ゴキブリの生息リスクがあるなら普段から使っているはず)
- 競合する餌となる食品残渣や養分を含んだ水を完全に0にするのは難しく、夏季連休でも特別良い効果が得られにくいから
電気配線が多い天井裏など液体殺虫剤を散布できない箇所は、ベイト剤が適しています。
ベイト剤は食べなければ効果が出ません。強制的に摂取させられる液剤やくん煙剤などより偶発的な要素が大きい施工方法です。ベイト剤を食べざるを得ない環境作りも同時に考える必要があります。
よくある質問
ガス施工を検討すべき状況は?
ゴキブリが毎月複数匹捕獲されていたり、ゴキブリの目撃が続いていたりすることです。夜行性のゴキブリを頻繁に見るということは、相当数の生息が予想されます。粘着トラップを設置しにくい製造環境であれば、ゴキブリの生息が多くても捕獲数はかなり少なくなりますので、捕獲調査の結果だけを見て安心してはいけません。
エアゾールスプレーは使わない方がよいって本当?
時と場合によります。目の前の1匹を駆除するだけなら構わないでしょう。ただし、ほとんどのゴキブリ用エアゾールスプレーには忌避効果のあるピレスロイド系成分が含まれており、中途半端に使うと奥へ逃げてしまい駆除しにくくなります。エアゾールスプレーを使う時は殺すときです。今回の薬剤施工パターンで言えば、缶タイプくん煙剤やガス施工では元々ピレスロイド系を使いますから、その時に一緒に使うのは問題ありません。
残効性の液体殺虫剤はどこで購入できる?
「サフロチンMC」「スミチオンMC」がネットショップで販売されています。ただ、SDS(安全データシート)などの入手も考えると、防虫の専門業者から購入した方が書類関係は揃えやすいかもしれません。ゴキブリ用の薬剤は「医薬品または医薬部外品」になり当社からは販売できませんが、販売してくれる専門業者のご紹介は可能です。
施工前にどんな準備が必要?
残効性の液体殺虫剤を散布するだけなら準備は不要です。缶タイプくん煙剤やガス施工を行う場合は、食品や食品に触れる器具等を格納したり、煙感知器のスイッチを切るなどの準備が必要です。養生をし過ぎると駆除効果が下がりますから、可能なかぎり養生はせず、しっかり洗浄するようにしましょう。
施工後の効果判定はどうしたらいい?
死骸の数・場所・種類・大きさ(成虫か幼虫か)を、施工前の予想と比べます。成虫が複数匹いれば繁殖している可能性がありますから、追加処置の検討が必要です。粘着トラップを施工時に交換し、前と後で捕獲数を比較する方法もあります。ただ、ゴキブリは基本的にゼロであるべきと考えますし、捕獲調査が難しいから増えてしまうので、捕獲調査による直接的な効果判定はチャバネゴキブリの場合だけでよいと思います。
金額はどのくらいかかる?
工場の規模や生息状況によります。当社の場合、小規模な工場で残効性液体殺虫剤を散布するだけなら1万円程度です(場所により出張費別途)。くん煙剤は市販の価格です。ガス施工を行う場合は、数万円プラスになります。建物・施工範囲が広ければ施工人数も増え、十数万円~になる可能性があります。
直前に依頼してもすぐできる?
液体殺虫剤の散布は大丈夫だと思います。缶タイプくん煙剤も市販品なので大丈夫でしょう。ガス施工の薬剤は取り寄せになるため、8月に入ってからだと難しい可能性があります。また、夏季連休前は依頼が込み合いますので、ご相談はお早めにしていただいた方がよいと思います。
まとめ
食品工場では通常時に殺虫剤を使用しにくいため、お盆などの長期連休はゴキブリを効率よく駆除できる貴重な機会です。
- 生息リスクが低いなら「残効性液体殺虫剤のみ」
- 費用を抑えつつ効果を高めたいなら「液体殺虫剤+缶タイプくん煙剤」
- 発生が多い場合や徹底的に駆除したいなら「ガス施工+速効性液体殺虫剤」
施工後は死骸の確認や捕獲調査を行い、必要に応じて追加施工を実施することで、より高い駆除効果が期待できます。
また、ゴキブリの卵鞘には薬剤が効かないため、一度施工して終わりではありません。施工結果を評価しながら次の対策につなげることが、食品工場でゴキブリを長期的に発生させないポイントです。
夏季連休という限られたタイミングを有効活用し、自社の生息状況や予算に合った施工方法を選択して、衛生レベルの維持・向上に役立てましょう。
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