鹿児島県内で広く問題となっているヤンバルトサカヤスデ。どのような生き物なのかを踏まえ、対策のポイントを解説します。
今回は、どのような対策で被害を抑えていくかを考える【②対策編】です。
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※ヤンバルトサカヤスデは厳密には昆虫ではないため「成虫・幼虫」ではなく「成体・幼体」と呼びますが、当記事ではイメージしやすさを優先し「成虫・幼虫」と表現します。
ヤンバルトサカヤスデ対策は3種類
ヤンバルトサカヤスデへの対策は、大きく3種類に分けられます。
- 殺虫剤による駆除
- 潜みやすい場所や建物に侵入しやすい場所の改善
- 粘着トラップによる捕獲
ヤンバルトサカヤスデはある特定の建物・敷地で発生しているのではなく、山野を含めた地域で大量発生しているため、敷地内だけで完全にいなくすることは困難です。
対策の目的は、敷地内での大量生息を防ぎ、室内での目撃を減らすことです。
3種類の対策を組み合わせて、ヤンバルトサカヤスデによる被害を軽減させていきましょう。
対策①:殺虫剤による駆除
鹿児島市では『コイレット』『クリーンショットB』などの粒剤を配布しており、使ったことがある方も多いと思います。

これらの粒剤はカーバメート系有効成分を含む優秀な薬剤で、次の利点があります。
- 殺虫力・速効性が高い
- 薬剤が残っているのが一目で分かる
- 袋からまくだけでかんたん
一方で、デメリットもあります。
- 垂直面や高い場所には使いにくい
- ヤスデの死骸を掃除する時に薬剤も除去されてしまう
- 粒剤が風で飛んでしまう
- 鹿児島市役所から配布されるのは月に1回3kg袋で、敷地が広いと量が足りない
そこで、粒剤だけでなく、液体殺虫剤を併用する駆除を推奨します。
※業務用粒剤(10kg入り)の販売も行っています。必要な方はお問い合わせください。
※カーバメート系有効成分は人間やペットなど哺乳類に対して無害ではありません。多量に摂取しない限り健康被害が起きる危険は低いですが、手などに付着した時はよく洗いましょう。
液体殺虫剤による駆除
液体殺虫剤はホームセンターではあまり販売されていませんが、業務用の殺虫剤では数多くあります。ネットショップでは一般の方でも購入することができます。
次のようなメリットがあります。
- 噴霧器を使えば手軽に広範囲に散布できる
- 粒剤では難しい垂直面や天面にも散布できる
- 狭い穴・隙間にも送り込むことができる
- 水で希釈するため、コストパフォーマンスが高い
一方で、デメリットもあります。
- 紫外線や雨風で劣化しやすい
- 河川に流れて環境破壊につながる危険がある
- 種類が多く、有効成分の特徴を知らないと正しく使えない
液体殺虫剤の殺虫効果
昨冬、ヤンバルトサカヤスデが多い時期に使用した事例です。
使用薬剤:ムシクリンFL(200倍希釈)

駆除現場(石垣になっている擁壁)

施工前の状況 石垣の隙間にヤンバルトサカヤスデが大量発生している

ムシクリンFL(200倍希釈液)を散布

翌日の様子 ヤンバルトサカヤスデの死骸が大量に落ちている

翌々日の様子 昨日ほどではないが、ヤンバルトサカヤスデの死骸が多数見られた
垂直面・せまい隙間には液体殺虫剤
鹿児島は山や丘陵を造成した住宅街が多いため、擁壁や石垣がかなり多く、ヤンバルトサカヤスデの生息に適した環境です。
粒剤では散布が難しい垂直面や隙間が多く、薬剤の量もたくさん必要になるため、大量発生している箇所には液体殺虫剤の使用をおすすめします。
発生場所は一つではなく、色々な所から徘徊してきますので、住宅の外周への粒剤散布は継続した方がよいと思います。
- 粒剤:建物外周にまいて、侵入を防ぐ
- 液体殺虫剤:潜み場所に散布して周辺の生息数を減らす。建物垂直面などにまいて粒剤を補完する
おすすめ液体殺虫剤は『ムシクリンFL』
上記の写真で分かる通り、直接噴霧したり潜み場所に使えば200倍希釈液でも高い駆除効果を発揮します。
潜み場所ではない平面の壁や地面に散布しておく場合は、50倍希釈くらいにした方がよいです。
ムシクリンFLの優れたところは殺虫力だけではありません。
- ピレスロイド系とは異なり水棲生物への毒性が低く、環境汚染リスクが低い
- 土壌吸着性が高く、地面の表層部に成分がとどまる(効果が長持ち)
なお、(デメリットではありませんが)次の効果は期待できません。
- 速効性はない。ヤスデに直接かけても殺虫するまで1~2時間はかかる
- 忌避性はない。散布した面をヤスデが嫌がって通らない、ということはない
100ml入りボトルがAmazonでも販売されいます。
フェニルピラゾール系のピリプロールという有効成分が含まれています。
ピリプロールはシロアリ駆除剤や、犬の首につけるノミダニ駆除剤に使用されている成分です。特定外来生物のアルゼンチンアリ対策でも使われる成分・薬剤で、住宅街での使用実績も豊富にあります。
関連記事:ヤンバルトサカヤスデへの殺虫剤テスト
対策②:潜みやすい場所や建物に侵入しやすい場所の改善
薬剤による殺虫と同じくらい重要なのが、敷地内の環境改善です。
敷地内に潜むヤスデを減らす
- 落ち葉溜まりはできるだけ除去する(腐りかけの落ち葉をよく食べる生き物です)
- 植木鉢などの下に集まりやすいため、下に空間を作るか、薬剤処理する
- 発生源の土壌乾燥や薬剤処理で幼虫のうちに駆除する


落ち葉や水が溜まる擁壁の下は、ヤンバルトサカヤスデの発生源になりやすいです。
秋に成虫が潜むだけでなく、卵を産んで、そこで幼虫が育つ場所になります。


擁壁の上が空地・空き家になっていると、上から落ち葉が降ってくることはどうしようもありません(写真の現場では主にツル植物のクズの葉が大量に落ちてくる)。
掃除をするか、幼虫のうちに液体殺虫剤を散布するなどして、敷地内で増えないようにする必要があります。小さな幼体であれば、殺虫剤の濃度が低くても効果が出やすいです。
建物への侵入経路を塞ぐ
隙間を塞いで建物への侵入を防ぐことも重要です。
一般の住宅では、見えにくい箇所に隙間ができていることがあります。


築30数年のよくある一戸建て住宅では、もともとの構造に加えて経年劣化が進みつつあります。
コーキングやネット、金網などで隙間を塞ぐことで侵入経路を少なくできます。
ヤンバルトサカヤスデの成虫は直径数ミリの大きさですから、完全に密閉できなくても侵入予防は可能です。
対策③:粘着トラップによる捕獲
周辺での発生がとても多い場合や、建物の問題で侵入経路を塞ぐことが難しい場合があります。
そうしたケースでは、室内をうろつくヤンバルトサカヤスデを少しでも減らすため、粘着トラップを置いて捕獲する方法があります。
ゴキブリなど歩行性の害虫用の粘着トラップ(ゴキブリほいほい等)を室内や玄関などに置いて捕まえます。

こうした「いかにも虫を捕まえています」という粘着トラップだと困る場合は、目立たないタイプのプラスチック製のものもあります。



補助的な方法で、根本的な解決にはなりませんが、部屋の中をウロウロされるよりはマシだと思います。
ヤスデ用の捕獲トラップというものはなく、ヤンバルトサカヤスデを誘引する(おびき寄せる)誘引剤もありません。
殺虫剤を使わないので、小さなお子様やペットがいるお家でも安心して使えます。ただ、不用意に触ると粘着剤が手などに付くので、その点は注意が必要です(毒ではありません)。
よくある質問
Q. 毎年薬剤を散布しなければいけませんか?
その年の状況を見てでよいと思います。ただ、年々生息域が拡大しており、昨年多かったなら今年も出る可能性は高いです。
Q. 粒剤や液体殺虫剤は、雨が降ったら散布し直す必要がありますか?
粒剤は目で見て残っていればそのままで大丈夫です。液体殺虫剤は、本降りの雨なら散布し直した方がよいです。
Q. ヤンバルトサカヤスデは家の中で繁殖しますか?
通常はしません。「腐葉(濡れて腐りかけの落ち葉等)」をエサとしており、普通の木造住宅の床下のような乾いて何もない空間で繁殖することはありません。
Q. ムカデとの違いは?
ムカデは毒があり咬むことがあります。ヤスデに毒はなく、人への被害は不快感だけです。臭いが気になるという人もいます。粒剤をまくと粒剤の臭いはけっこうします。
Q. 液体殺虫剤に臭いはありますか?
ほとんど気にならないはずです。全くの無臭ではありませんが、水で数十倍~200倍に希釈して屋外に散布しますので、臭いが問題になることは通常ありません。
まとめ
ヤンバルトサカヤスデの対策は3点です。
- 殺虫剤で駆除して減らす
- ヤスデの潜み場所・発生する場所をなくしていく
- 侵入してしまう分は捕獲する
これらを1つだけ行うのではなく、組み合わせることがヤンバルトサカヤスデ対策のポイントです。
具体的に、どこに、どのような対策を実施すべきかは現場によって大きくちがいがあります。
ヤンバルトサカヤスデにお困りな時は、お気軽にお問い合わせください。
ちなみに、今回ご紹介したような、「殺虫剤による駆除・環境の改善・捕獲」を組み合わせて対策することを「総合的有害生物防除(IPM)」と呼びます。IPMについてはこちらで解説しています。
関連記事:効果的な害虫対策の考え方【IPM】