ヤンバルトサカヤスデに対する液体殺虫剤のテスト(60秒間薬剤に接触させる簡易試験)
鹿児島で大量発生しているヤンバルトサカヤスデ。
粒剤(砂・粉のような殺虫剤)で殺虫できることはよく知られていると思いますが、液体殺虫剤ではどの程度の効果が得られるでしょうか。
ヤンバルトサカヤスデの潜み場所に散布できれば長時間接触させることができ、十分な殺虫力が得られることは分かっています。
しかし、地面や壁などに散布しておいても、徘徊している時に上を歩くだけでは短時間しか接触させられません。
短時間ではどの程度の効果があるのか、60秒間薬剤を散布した面にヤスデを接触させる方法で簡易的に試してみました。
テスト方法
紙で作った箱に、各殺虫剤を吹き付け、1時間ほど乾かします。

それぞれの紙箱にヤンバルトサカヤスデを20匹ずつ入れ、薬剤の影響が続かないよう60秒後に取り出し、それぞれ個別の容器で保管しました。

屋外で薬剤散布をする時は、土や埃が付着していたり、モルタルのような素材だったりで、液体が染み込んでいってしまうことが多く、同じように染み込みやすい紙の箱を使いました。
2日後、7日後にどのくらい殺虫できたかを調べました。
今回は液体殺虫剤のテストですが、一般的な市販エアゾール剤の代表として『アースジェット』も試してみました。
※アースジェットはもともとヤスデ駆除用の殺虫剤ではありません。
テスト結果
2日後・7日後の致死率がこちらです。
※本試験は薬剤を散布した面に60秒間接触させる簡易試験です。屋外での実際の効果は、散布面の材質や雨・日光などの環境条件によって大きく変化します。
| 薬剤名 | 有効成分 | 剤型 | 希釈倍率 | 2日後の致死率 | 7日後の致死率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ムシクリンFL | ピリプロール(フェニルピラゾール系) | フロアブル剤 | 50倍 | 100% | 100% |
| 100倍 | 0% | 55% | |||
| 200倍 | 0% | 15% | |||
| サイベーレ0.5SC | シフルトリン(ピレスロイド系) | フロアブル剤 | 20倍 | 100% | 100% |
| ETF水性乳剤2 | エトフェンプロックス(ピレスロイド様) | 水性乳剤 | 10倍 | 40% | 45% |
| 水性サフロチン乳剤 | プロペタンホス(有機リン系) | 水性乳剤 | 10倍 | 35% | 40% |
| プロコートGP | ピレスロイド系(詳細非公表) | ペイント剤 | 2倍 | 100% | 100% |
| 10倍 | 100% | 100% | |||
| アースジェット | フタルスリン・フェノトリン(ピレスロイド系) | エアゾール剤 | – | 0% | 35% |
薬剤の量は用法・用量に沿っています(ムシクリンFL50倍・アースジェットは経験からの使用)。
ムシクリンFL(50倍)・サイベーレ・プロコートGPで良い結果を得られました。
結果に対する考察
剤型と有効成分の2点から、どれを選択すべきかを考えてみます。
剤型(薬剤の形状・状態)
剤型による影響も考えられます。
水性乳剤は紙にすぐに染み込んでしまいましたが、フロアブル剤・ペイント剤の希釈液は紙にあまり染み込まず、表面で延ばすことができました。
乳剤は有効成分が薬液に溶けており、フロアブル剤は細かな粒子の状態で存在していて薬液に溶けてはいない、という違いです(例えると、乳剤は牛乳で、フロアブル剤はみそ汁)。
屋外で薬剤散布をする時はフロアブル剤が推奨されていますが、なるほど、という結果でした。
有効成分
サイベーレのシフルトリンと、プロコートGPのピレスロイド系成分(おそらくシフェノトリン)は、魚毒性(魚や甲殻類など水棲生物に対する毒性)が高い成分です。
ヤンバルトサカヤスデ対策として散布する場合、広範囲に散布することになり、住宅街の周りに河川や田畑が多い鹿児島では水域へ流出した場合、水棲生物へ悪影響を与えるおそれがあります。
ムシクリンFLのピリプロールは環境負荷が低く、50倍希釈でこれだけの効果が得られるなら十分でしょう。
ヤスデ用粒剤によく使われているカーバメート系有効成分の液体殺虫剤は不快害虫用・医薬品・医薬部外品で商品が無く、テストができませんでした(動物用医薬品ではありますが使用不可)。
ヤンバルトサカヤスデに対する殺虫効力試験の研究論文
2000年の資料になりますが、研究論文が出ていました。
外部リンク:J-STAGE 『奄美大島におけるヤンバルトサカヤスデの発生過と防除薬剤の探索』九病虫研会報 46:118-122(2000) 山口 卓宏ら
これによると、カーバメート系の成分が非常に効果が高く、有機リン系やピレスロイド系は効果的ではない、という結果でした。
※なお、試験条件が異なるため、今回の結果と単純に比較することはできません。有効成分ごとの参考として。
今回私が使ったシフルトリン・シフェノトリンはこの研究では扱われていませんでした。
シフルトリン・シフェノトリンは殺虫力が非常に高い成分として知られており、駆除効果は出たものと考えられます。ただ、環境負荷が高いため、屋外での大量使用には適していません。
エトフェンプロックス(ピレスロイド系と似た効果を持ち、魚毒性が低い)の効果がもっと高ければ選択肢の一つになるのですが、この研究では良い結果は出ていません。
まとめ
ヤンバルトサカヤスデに対しては、60秒ほどの短時間接触で駆除しようとすれば、ムシクリンFL(50倍希釈)が適しています。
ただ、これも何日効果が持続するかは、日当たりや雨風など環境に左右され、安定はしないはずです。
ヤンバルトサカヤスデ対策の殺虫剤は、やはり建物外周にカーバメート系の粒剤をまくのが基本です。
粒剤をまけない垂直面や狭い所は、環境負荷の低いムシクリンFLを散布するのがよいと思います。
※以下の記事で触れているように、潜んでいるヤンバルトサカヤスデに直接吹きかけることができるなら、200倍希釈液でも十分な殺虫効果が得られます。
関連記事:鹿児島のヤンバルトサカヤスデ駆除【②対策編】