家や職場でゴキブリを見つけたとき、多くの人は殺虫スプレーや毒餌を購入して自分で駆除しようと考えます。
インターネットでは、ゴキブリの解説やおすすめの殺虫剤・対策方法を紹介した記事はたくさんあります。そして、多くの記事の最後には「難しい場合は専門業者へ依頼しましょう」と書かれています。
では、専門業者は何が違うのでしょうか。
結論から言うと、業者の強みは次の2点です。
- 幅広い業務用殺虫剤で虫の性質に合わせた駆除ができること
- 駆除までの道筋を組み立てられること
この記事では、ご家庭や飲食店でのクロゴキブリ(一般的にイメージする黒くて大きいゴキブリ)対策を例に、専門業者だからできることを解説します。工場などでも基本的な考え方は同じです。
市販品によるゴキブリ駆除の限界
市販の殺虫剤は安全性が高く、誰でも使いやすいように作られていますが、効果には限界があります。
「目の前にいるゴキブリを駆除すること」は得意でも、隠れているゴキブリまで駆除することは簡単ではありません。
一般的に使われる市販品のゴキブリ用殺虫剤は、「エアゾールスプレー」「缶タイプくん煙剤」「固形毒餌」の3種類です。
エアゾールスプレーは局所的・瞬間的
市販スプレーの多くは、ピレスロイド系殺虫剤が使われています。
速効性があり目の前の1匹の駆除には適していますが、忌避効果があるため中途半端に使うとゴキブリが嫌がって移動拡散する恐れがあります。
缶タイプくん煙剤は煙の流れ次第
バルサンやアースレッドのような缶タイプくん煙剤は、部屋に中に潜んでいるゴキブリには効果的でしょう。
ただし、煙の流れを細かく制御するのは難しく、ゴキブリが巣を作るような流し台の隙間や、配管の隙間の奥には成分が届かない可能性が高いです。
毒餌は食べてもらわなければ効かない
ブラックキャップなどの固形毒餌は食べれば効きますが、食べなければ効果はありません。
- 設置場所が悪い
- ほかに食べ物がある
- 古くなって誘引力が落ちている
このような条件では期待した効果が出ないことがあります。ゴキブリは雑食性で何でも食べ、わずかな食品ゴミや水分でも餌にしてしまいます。
ゴキブリだけではありませんが、毒餌(ベイト剤)を食べさせるのは私たち駆除業者でも難しく、それ以外の食べ物が全く無い環境を作れない限り「食べてくれたらいいな」という程度の期待値で使用しています。(クロゴキブリは比較的食べることが多く、業務用のジェル剤なら高い喫食率を期待できる現場もあります)
なお、よく販売されているゴキブリ用毒餌の成分はフィプロニルで、チャバネゴキブリは抵抗性を持った個体群が増えてきています。クロゴキブリでは抵抗性の心配はないでしょう。
見えているのは全体の一部
クロゴキブリは昼間ほとんど姿を見せません。
冷蔵庫の下や家具の裏、壁の隙間などで休み、夜になると活動します。
つまり、1匹退治しても、隠れているゴキブリが残っていれば再び現れます。
幅広い業務用殺虫剤で虫の性質に合わせた駆除ができる
駆除業者は様々な特性を持つ殺虫剤を、虫や目的に応じて使い分けます。
「業者は強い薬を使うからよく効く」と思われがちですが、強い・弱いというよりも、大事なのは正しい知識に基づいて使い分けることです。
ゴキブリが増えている現場で駆除する場合、次のような作戦があります。お客様のご予算・ご要望に応じて選択します。
- 巣から追い出して、その場で一網打尽にする
- 残効性殺虫剤で待ち伏せし、夜に出てきたゴキブリを駆除する
- 残効性殺虫剤で待ち伏せし、夜に出てきたゴキブリに巣に持ち帰らせて駆除する
ゴキブリ用の毒餌(業務用ベイト剤)もありますが、毒餌だけで駆除を試みるのはやや無謀でしょう。食べるかどうか偶然に左右されやすいからです。
基本的にはエアゾールスプレーや殺虫ガス、液体殺虫剤といった、ゴキブリに対して強制的に有効成分を摂取させる方法を取ります。
ちなみに、ここがネズミ駆除との大きなちがいです。ネズミに対しては強制的に有効成分を摂取させる毒ガス攻撃のようなことはできませんから(人間に対しての危険が大き過ぎるため)、害虫よりもネズミ駆除の方が難易度が高い施工です。
1.追い出して一網打尽
巣から追い出すのはエアゾールスプレーや二酸化炭素の殺虫ガスを使用します。これらはイミプロトリンやシフェノトリンといった対ゴキブリに効果が高い成分を使います。
エアゾールスプレーはゴキジェットプロのような市販品とほぼ同じです。二酸化炭素の殺虫ガスは市販品には無い駆除業者専用の薬剤です。
殺虫ガスは部屋中がモクモクするので煙感知器や養生など事前準備が必要です。
殺虫ガスと缶タイプくん煙剤の最も大きなちがいは、作業者がノズルを持つため噴霧したい方向に決められることです。
追い出しただけでは逃げられてしまうことがあるので、事前に液体殺虫剤を散布しておき、それに触れさせて駆除します。液体殺虫剤には致死効果が高いものが多く、併用することで高い効果が得られます。
次のようなメリットがあり、大量発生してしまった際や、少ない回数で大きな効果を得たい時に使われる方法です。
- 壁の中などを含めた建物全体を駆除できる
- 巣から強制的に追い出すため偶然に左右されにくい
- ゴキブリが出てこなければ「生息無し」と評価できる
薬剤は卵鞘(20~30匹の幼虫が入った卵)には効かないため、クロゴキブリの卵期間である40日前後経過してから、もう一度施工する必要があります。
2回目の施工で孵化した小さな幼虫だけがたくさん出てきたら成功です。成虫がまた出てくるようであれば繁殖が続いている可能性があります。
2.残効性殺虫剤で待ち伏せし、夜に出てきたゴキブリを駆除する
クロゴキブリは夜に活動します。
そこで、隠れ場所から出てくる通り道に残効性の液体殺虫剤を処理し、歩いてきたゴキブリを駆除します。
使用薬剤の代表例はスミチオンMC(有効成分:フェニトロチオン)やサフロチンMC(有効成分:プロペタンホス)です。MCはマイクロカプセルのことで、有効成分を特殊な樹脂でコーティングされており、水で40~80倍程度に希釈して使います。
これらは有機リン系に分類される殺虫剤で、忌避効果はなく遅効性です(有機リン系という名称に不安を感じる方もいますが、農薬や衛生害虫用薬剤にも広く使われてきた系統です)。
遅効性とはいっても1~2時間で殺虫してしまうため巣に戻る前に死んでしまい、巣に残っていた個体は駆除できないことがあります。
この「残効性・遅効性・忌避効果なしの液体殺虫剤」というのが市販品には無い性質の殺虫剤で、駆除業者のメイン武器です。
次のようなメリットがあり、よく使われる手法です。ジェル状の業務用毒餌剤と併用することも多いです。
- 薬剤が比較的安価
- 広範囲に短時間で施工できる
- すぐに効果が分かりやすい
- 残効性も1週間程度は期待できる
- 事前準備はほとんどいらない
ピレスロイド系スプレーや液体殺虫剤とは併用せず、自然に出てきて上を歩いてもらいます。
この方法はゴキブリの活動が活発な夏季に有効です。気温が低いと休眠してしまい夜になっても出歩かなくなるため効果は出ません。
散布した後、できれば数日は水で流したりせずにいると効果的です。店舗や工場で施工する場合、休日前の終業後に実施するのが最も効果的です。夏季休暇など長期連休があれば、そこでやるのがベストです。
スミチオンMCやサフロチンMCは楽天などネットショップでも販売されているようです。
3.残効性殺虫剤で待ち伏せし、夜に出てきたゴキブリに巣に持ち帰らせて駆除する
上記2.とやり方は同じですが、使う薬剤が異なります。液体殺虫剤のベクトロンFL(有効成分:ブロフラニリド)を使います。
ブロフラニリド製剤の特長は「超遅効性」で、小型のチャバネゴキブリでもノックダウンまでに7~8時間かかります。大型のクロゴキブリならもっとかかるでしょう。
薬剤が高価ですが次のような大きなメリットがあります。
- 超遅効性で薬剤に触れたゴキブリが巣に戻るため、巣から出てこなかった個体にも伝播効果が期待できる
- チャバネゴキブリに非常に効果が高い
チャバネゴキブリは薬剤抵抗性が発達しやすく、駆除がかなり難しい害虫でしたが、新薬剤としてベクトロンFLが登場して一気に駆除が進みました。
ベクトロンFLは新系統薬剤のため抵抗性リスクが無い、安全性が高い、長期間効果が続く、水濡れにも強いなど、他にも優れた点がたくさんあります。
ベクトロンFLは一般販売されていませんが、同じ有効成分のワンプッシュスプレー剤等は市販されています(ゼロノナイトなど)。
| 方法 | 使用薬剤の例 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| ①追い出して 一網打尽 |
エアゾールスプレー 殺虫ガス(二酸化炭素) +液体殺虫剤 |
建物全体を一気に駆除できる。巣から強制的に追い出すため偶然に左右されにくい。煙感知器や養生など事前準備が必要。 | 大量発生時/少ない回数で大きな効果を得たいとき |
| ②待ち伏せ (その場で駆除) |
スミチオンMC (フェニトロチオン) サフロチンMC (プロペタンホス) |
忌避効果なし・遅効性(1〜2時間)。比較的安価で広範囲に短時間施工可能。残効性は1週間程度。事前準備がほぼ不要。 | 夏季などゴキブリの活動が活発な時期/コストを抑えたいとき |
| ③待ち伏せ (巣に持ち帰らせる) |
ベクトロンFL (ブロフラニリド) |
超遅効性(チャバネで7〜8時間、クロゴキブリはさらに長め)。薬剤に触れた個体が巣に戻るため、隠れている個体にも伝播効果が期待できる。薬剤は高価。 | チャバネゴキブリなど薬剤抵抗性が懸念される場合/巣ごと根本的に減らしたいとき |
駆除までの道筋を組み立てられること
ゴキブリ駆除で最も難しいのは、敵が見えないことです。
専門業者は、いきなり薬剤を散布するのではなく、「どこで増えているのか」「どこから侵入しているのか」を調べてから施工方法を決めます。
- ゴキブリの生息状況を調査する
- 調査結果を踏まえて駆除方法を設計し、推移を予想する
- 追い出すのか、夜出てきた所を駆除するのか、巣に持ち帰らせるのかなど、目的と環境に応じて殺虫剤を使い分ける
- 駆除後に期待した通りの効果が出たか確認し、必要なら追加対策を行う
つまり、駆除までの道筋を組み立てられることが、市販品での自主対策との最も大きな違いです。
人間の体で例えれば、病院で診察してもらって治療を進めていくのと同じです。
ドラッグストアで市販薬を買って様子を見てもいいですが、原因も適切な対処も分からないまま我流で進めても、快復するかは分かりません。
まずは調査
調査では、さまざまな情報を集めます。
- ゴキブリの種類
- 幼虫か成虫か
- フンや卵鞘の有無
- 粘着トラップによる捕獲数・場所・虫の生死
- 追い出し調査の結果
- 卵鞘を抱いたメスがいるか
例えば、幼虫が多ければ室内で繁殖している可能性が高くなります。
反対に、大型の成虫ばかりなら屋外から侵入しているケースも考えられます。
このような情報をもとに、薬剤の種類や施工場所を決定します。
つまり、「とりあえず薬をまく」のではなく、原因に合わせて駆除方法を組み立てることが業者の最大の強みです。
施工後は「効果検証」まで行う
薬剤を散布して終わりではありません。
期待した効果が得られたかどうかを確認し、必要に応じて追加施工や方法の見直しを行います。(※ご予算などの都合で1回作業のみになる場合もあります)
例えば、施工直後の粘着トラップにゴキブリの捕獲があるのは想定内ですが、1~2週間しても生きたゴキブリが捕獲される場合は、近くで生息が続いている可能性があります
効果検証で大事なことは、虫がどのくらい減ったかというよりも、予想した成果が得られたかどうかです。
良い結果が得られたとしても、想定したブレ幅の範囲を超えていた場合は、その理由を考えなければいけません。見込みが外れたのは事前の調査・分析が不十分だったということで、期待を下回る結果に終わった可能性もあったからです。
このように「調査 → 施工 → 効果確認」を繰り返しながら駆除を進めることで、ゴキブリを効率よく減らしていきます。
害虫駆除の基本的な考え方はこちらで解説しています。
関連記事:効果的な害虫対策の考え方【IPM】
業務用殺虫剤は危険なの?
「業務用の殺虫剤は、市販品より危険なのでは?」と心配される方も少なくありません。
しかし、「業務用=危険」「市販品=安全」と単純に判断することはできません。
薬剤にはそれぞれ特徴があり、毒性や効き方も異なります。専門業者は施工場所や目的に応じて薬剤を選び、使用量や施工方法を調整しています。
自分でうまく駆除するには
すべてのケースで業者へ依頼する必要があるわけではありません。
発生初期であれば、市販品だけでも十分に駆除できることがあります。
まずは情報収集する
ゴキブリの種類や自分でできる対策など、インターネットで情報収集しましょう。大抵の情報は手に入ります。
殺虫剤は価格より目的で選ぶ
「一番高い商品が一番効く」とは限りません。
- 今いるゴキブリを退治したい
- 巣ごと減らしたい
- 侵入を防ぎたい
目的によって選ぶべき製品は変わります。
部屋を片付ける
ゴキブリは物陰を好みます。
部屋を清潔に保つことも大切ですが、それ以上に物を減らして見通しを良くすることが駆除しやすさにつながります。
物が多いと薬剤があまり散布できず、駆除が進まないことがあります。
駆除業者に訊く
一番良いのは、駆除業者にやり方を聞くことです。
見積りを無料で行っている業者も多く、施工方法や費用を聞いたうえで依頼するかどうかを決められます。
問題点や駆除方法を聞いて、自分でできそうなら自分でやってみましょう。その場合、「いつまでに解決できなかったら業者に依頼する」と決めておいた方がよいと思います。ずるずる続けていると悪化する恐れがあります。
駆除業者の選び方
料金や人柄など色々な選び方があると思いますが、最低限クリアしていてほしい技術力を確かめる簡単な方法があります。
「その殺虫剤の有効成分は何ですか?」という質問です。
有効成分の性質や、それを選んだ理由を分かりやすく説明してくれる業者なら安心材料の一つです。
よくある質問
たまに1匹だけ見かけます。業者へ依頼した方がよいですか?
外から偶然侵入しただけであれば、原因そのものがないため駆除は難しく、市販品で様子を見るのが現実的です。ただ、気が付かないだけで実は、ということもあるため、不安に思う場合はご相談ください。相談=依頼(発注)ではないのでお気軽にどうぞ。
家の中で増えているかどうかは、どう判断できますか?
幼虫やフン、卵鞘が見つかる場合は、室内で繁殖している可能性があります。粘着トラップを設置して捕獲状況を確認するのも有効です。
ゴキブリが外から入らないようにする方法はありますか?
外壁や配管まわりの隙間をふさぐことが基本です。また、床下換気口に防虫ネットを設置したり、建物の外周へ残効性殺虫剤を処理したりすることで侵入を減らせる場合があります。
忌避剤を使っていますが、あまり効果を感じません。
忌避剤はゴキブリを寄せ付けにくくする製品です。風向きや設置場所などの影響も受けるため、駆除ではなく補助的な対策と考えるとよいでしょう。
駆除業者はどんな殺虫剤を使いますか?
ゴキブリ駆除でメインで使うのは「残効性がある・忌避性がない・遅効性」という性質をもった液体殺虫剤です。夜に徘徊するゴキブリを確実に駆除するのに適しています。
業務用の殺虫剤を譲ってもらえますか?
ゴキブリ用の殺虫剤については、当店では対応していません。医薬品や医薬部外品は法律で規制があるためです。一方で、近年はインターネットで購入できる業務用殺虫剤も増えていますので、使用方法や注意事項を十分に確認したうえで利用してください。ゴキブリなど衛生害虫用ではない不快害虫(アリ・ヤスデなど)向けの薬剤は販売なども可能です。詳細はお問い合わせください。
ゴキブリ駆除の料金はどのくらいですか?
広さやゴキブリの生息状況により変わりますが、一般住宅や小規模飲食店であれば1回5,000~10,000円くらいです。ベクトロンFLや二酸化炭素の殺虫ガスなど、高価な殺虫剤が必要だと料金は上がると思います。ご予算内でのご提案も可能です。
殺虫剤は人に害はありませんか?
どの殺虫剤も「完全に無害」ではありません。しかし、適切に施工すればリスクを大きく減らすことができます。小さなお子様やご高齢の方、ペットがいるご家庭、化学物質に敏感な方がいる場合は、事前にメーカーや駆除業者へ相談することをおすすめします。
まとめ
ゴキブリ駆除を業者へ依頼する最大のメリットは、強い薬剤を使うことではありません。
- 調査して原因を特定する
- 状況に応じた施工方法を選ぶ
- 業務用薬剤を使い分ける
- 施工後まで効果確認する
このように、「調査・計画・施工・効果検証」まで含めて駆除を行うことが、市販品での自主対策との大きな違いです。
一方で、発生初期や偶発的な侵入であれば、市販品で十分に対応できるケースもあります。
「自分で対応できそうか」「繁殖している可能性があるか」を見極め、必要に応じて専門業者へ相談すると、時間や費用を無駄にせず効率よくゴキブリ対策を進められるでしょう。
ゴキブリ関連の基本的な解説・紹介WEBサイト(外部リンク)
きれいにまとめられていると思ったWEBサイトをいくつかご紹介します。一般的な情報収集にどうぞ。
外部リンク:アース製薬(株)様HP ゴキブリの駆除・対策
外部リンク:害虫駆除110番様HP ゴキブリの幼虫の見分け方を画像で解説!大量発生を防ぐ幼虫駆除方法