ネズミが増えてしまった時、できるだけ短期間で駆除していくためには、ポイントを押さえた駆除施工をする必要があります。
この記事では、主に事業者(お店や工場)向けに、武田信玄で有名な「風林火山」に当てはめて解説します。一般住宅でも応用できますので、お客様ご自身でネズミ駆除に取り組む際や、駆除業者選びの参考にされてください。
結論:
ネズミ駆除の基本は、早く動く・警戒させない・初期に集中投入・結果を見て冷静に修正する、の4点です。
※この記事では、クマネズミ・ドブネズミ・ハツカネズミのいわゆる「イエネズミ3種」をまとめてネズミとして扱います。種類によって生態や行動には違いがありますが、今回は細かな違いには触れず、ネズミ駆除に共通する考え方を中心に説明します。
ネズミ駆除の難しさ
ネズミは警戒心が高く知能もあるため、罠にかかりにくい生き物です。特にクマネズミは、赤外線カメラで観察すると粘着シートの前で立ち止まって引き返したり、粘着シートをくわえて動かしてしまう様子も見られます。
また、狭いすきまも通ることができ、自らかじって穴を広げてしまうこともあります。
加えて、繁殖スピードも「おおよそ3ヶ月で次世代が生まれ、一度に6~10匹程度子どもを産む」と速く、適切に対処していかないと被害がなかなか収まりません。種類による違いや個体差がありますが、いずれも短期間で増えていきます。
■ネズミの生態や防除方法の基礎知識はこちらから
外部リンク:鵬図商事株式会社HP ペストコントロールの基礎知識と知って得する技術ノウハウ・情報 第3回(ネズミ回)
ネズミ駆除の極意は「風林火山」
ネズミ駆除はこのように難易度が高いため、考え方の軸となる基本があります。
そして、その大事なポイントを挙げていくと、まさに「風林火山」に当てはまります。
- 【風】その疾きこと風のごとく:ネズミが増える前に、できるだけ早く駆除を始める
- 【林】その徐かなること林のごとく:ネズミに警戒させないように罠を仕掛ける
- 【火】侵掠すること火のごとく:最初から資材を出し惜しみせず、やる時は一気にやる
- 【山】動かざること山のごとく:結果に一喜一憂せず、信じて待つ
具体的に解説していきます。
※ネズミ駆除で使う資材の解説はこちら
関連記事:ネズミ駆除DIY|駆除資材のメリット・デメリットと使い方のポイントを解説
【風】ネズミ駆除は初動が命|早く始めないと増える
初動は早く
ネズミ対策は、できるだけ早く駆除を始めることが重要です。これには2つの意味があります。
- お客様は、駆除業者への見積依頼を早めにする
- 駆除業者は、調査・見積・施工開始を最速日程で行う
前述の通りネズミは繁殖スピードが速いため、増える前に駆除することが重要です。
ゴキブリのような害虫の場合は、もし増えてしまっても強力な殺虫剤などでガツンと減らせるケースが多いのですが、ネズミはそうはいきません。ネズミに効く薬剤は人間にも効いてしまい、増えたネズミを一網打尽にする「毒ガス攻撃」のような方法は取れないからです。
駆除業者への見積依頼は早く
ご自身でネズミ駆除に取り組むとしても、上手くいかない場合もありますし、やり方のヒントを得るためにも、駆除業者には早めに見積調査をしてもらいましょう。
また、相見積を取ることも推奨します。料金比較はもちろん、駆除業者ごとにやり方や説明が異なるため、ご自身が最も納得できる業者を選ぶべきです。ネズミ駆除は技術と経験がかなり必要な施工で「お金を払えば必ず駆除してもらえる」というものではありません。
駆除業者のスピード感
私たち駆除業者としても、最初の調査・見積はできる限り最短日程で動きます。最低限の初期対応ができる資材は基本的に在庫しています。相見積をとる時は、業者のスピード感も判断基準の一つとして重要です。
調査を待ってから駆除する必要はない
ネズミ駆除において調査は重要ですが、駆除に入る前の初期調査に日数をかけるのは得策ではありません。
極論を言えば、初期調査はザックリで十分です。最初に大まかに把握し、その時に得られない情報は知識と経験に基づいて予測します。そして、駆除を進めながら生息数や活動範囲などのイメージの幅を狭めていきます。
調査に時間をかけても状況は変化していきますし、調査している間にネズミが増えて被害が拡大してしまっては本末転倒です。時には見切り発車する勇気も必要です。技術があれば修正できます。
【林】警戒心を刺激しない忍びの心|ネズミの気持ちになって
粘着シートはさりげなく
粘着シートはネズミが走っている時に「ついうっかり」踏んでしまうことで捕獲します。粘着シートの存在に気付いてしまえば、足を乗せたがりません。
そこで重要なのが、いかにして「気づいたら踏んでしまった」という状況を作るかです。
段差の下や、昇り降りする柱の下に置くと捕まりやすくなります。天井裏などに定着したネズミが夜に出てきている場合は、どのような経路で床に到達しているかを調査し、その降り口に置くと効果的です。
油断した瞬間を狙う
スーパーマーケットなどで特定の商品(例えばトマト)が連続して被害に遭う場合、トマト売場を囲むように、特に脚部周りに入念に粘着シートを配置します。「さりげなくないじゃないか」となりますが、トマト大好きなネズミはどうにかしてトマトにたどり着き、食べます。そして、満足して床に降りてきた時に捕まるケースがよく見られます。
エサは「慣らし」から始めることもある
エサでおびき寄せる捕獲器や殺鼠剤を使う場合は、まずは安全に食べられることを覚えさせてから駆除に移行することもあります(プレベイティング/先行給餌)。
ただ、これは必ずこうすべきというものではありません。エサ場への移動経路を遮断できた場合は、ネズミはこちらが配置したものを食べるしかありませんから、あまり慎重にならなくても効果は見込めます。また、ネズミの生息数がかなり多いと判断される場合も、とにかく早く減らすことが必要なので、最初から駆除優先で進めていきます。
【火】最初こそ火力全開|長引かせるとネズミは学習する
資材は出し惜しみしない
ネズミ駆除でありがちな失敗のひとつが、最初を小さく始めてしまい、罠を学習されて駆除できなくなってしまうことです。
駆除の開始直後は、捕獲資材などをたくさん配置するべきです。粘着シートは数十枚、数百枚を最初に投入します。殺鼠剤や捕獲器を使う場合は、最初は広範囲に配置します。
粘着シートの使用量の目安(天井裏と室内合わせて)は、次の通りです。
- 一般的な住宅:50~100枚
- 小規模な飲食店(客席20~50くらい):100枚
- 広めな飲食店(客席100くらい):200枚
- 大型店・工場:200枚以上(水で床が濡れている場合は粘着力が落ちるためバネ式も併用した方がよい)
㎡当たり何枚というよりも、ネズミが通りそうな場所がどのくらいあるかによります。
※殺鼠剤は子どもやペットが誤飲しないよう十分な注意が必要です。また、どこで死ぬか分からないため死骸が回収できず腐敗する可能性もあります。こうしたリスクを十分考慮し、商品ラベルをよく読んでからご使用ください。
多ければ多いほどよいか
コストが許容範囲内なら多いほどよいです。ただし、ポイントを押さえられていない物量作戦はコスパが悪くなります。
ネズミ駆除は必ずしも投入した資材・労力に比例した成果が得られるわけではありません(ゴキブリなど害虫駆除はある程度比例することが多いです)。学習されて逃げられてしまうためと、罠にかかる確率がもともと100%ではないためです。
しかし逆に言えば、初期の学習されていない状態であれば罠にかかる確率は高くなり、配置した粘着シートの数が多ければ確率的に捕獲できるネズミの数も増えます。経験上、特に幼獣(子ネズミ)は罠にかかりやすく、「まず減らす」には最初に幼獣をできるだけ捕獲することです。
初っ端は夜間の大量配置がベスト
室内にネズミが多く出没して食べ物の被害などがある場合、最初に夜間に集中的に配置すると効果的です。配置期間は長い方がよく、店休日などがあればそれを利用します。
集中的な大量配置を行う前に、あえて数日間何もせず、ネズミに好きにさせておき、油断を誘うこともあります。「肉を切らせて骨を断つ」作戦です。「初動は早く」と前述しましたが、大量配置できる日程が近々であるなら、中途半端に始めるよりも、それに合わせた方がよいかもしれません。
繰り返しになりますが、とにかくネズミは最初が肝心です。
隙間塞ぎ工事は強固に
ネズミ駆除で重要な要素に、移動経路を遮断する隙間塞ぎがあります。
この時に重要なのが、ダンボールやガムテープ、プラスチック、木材など軟らかいものではなく、ステンレス板など硬いもので塞ぐことです。ネズミはかじる能力が高く、アルミ板でさえかじって穴を開けてしまいます。
ネズミが通れる隙間の大きさは、個体の大きさや種類により差がありますが、1cm~2.5cmくらいです。実際にその現場のその隙間を通ろうとするネズミの大きさを事前に知ることはほぼ不可能なので、「大体1cm前後、大人の指が通ればネズミも通る」と認識しておけば十分でしょう。一般的な目安より小さい個体もいますから、塞ぐ時は5mm以下になるよう硬い材質のものをしっかり固定します。
駆除資材の配置にせよ、隙間塞ぎにせよ、「やる時はガッツリやる。中途半端にしない」ことが大切です。
穴は見つけ次第すぐに塞ぐべき?
あえて塞がずに、移動経路を限定して駆除を進める方法もあります。全て最初に塞いでしまうと、行き場をなくしたネズミが暴れて色々なものをかじり、被害が拡大することもあります。
室内に出てくる「出没口」と、外から建物内(天井裏や壁内)に入ってくる「侵入口」は分けて考え、どのタイミングでどの経路を塞いでいくか、よく検討する必要があります。
大事なのはネズミの活動を把握し、コントロールすることです。
【山】焦らず、信じて待つ|決断には根拠をもつ
結果に一喜一憂しない
最後に重要なのが、焦ってジタバタし過ぎないことです。
ネズミ駆除には「ここに粘着シートを置けば捕まる」「殺鼠剤にこれを混ぜればネズミが食べる」などの正解はありません。
移動経路などを予測して駆除資材を配置しても、すぐに成果が表れないことがあります。ネズミが警戒しているだけなのか、そもそも的外れなことをしているのか、そこを判断する必要があります。調査結果や知識、経験に基づいて論理的に駆除を進めているなら、じっと待つことも大事です。動かしてばかりだと、せっかく警戒心が緩んできてもリセットされてしまいます。
奥義『無為の為(むいのい)』
「余計な手を出さない」ということです。もちろん何もしない訳にはいきませんが、最初に広げた網を徐々に絞っていくイメージです。なかなか罠にかからなくてもジタバタせず、ネズミを手のひらの上で転がして、最終的に駆除する。まさに達人の域です。
「で、次はどうする?」と問う
成果があがってもあがらなくても、今の方法を変えるか変えないかを決める必要があります。その時は、どういう決断をするにせよ「こういう理由でこうする」と明確にしていきます。
よくある質問
粘着シートは敷き詰めた方がいい?
「ここに必ず来る」「ここは必ず通る」という場所があればそこには敷き詰めた方がよいです。ただ、広い床や通路に全て敷き詰めても、かかった膨大なお金と手間に比例した効果は得にくいと思われます。
殺鼠剤(毒餌)を食べたネズミは外に出て死ぬって本当?
本当ではありません。どこで死ぬかは分かりません。天井裏で死んでしまった例はたくさんあります。
粘着シートは何十枚も使わないと効果がない?
1枚の粘着シートに3匹捕まることもあれば、300枚置いて1匹も捕まらないこともあります。何枚使わないといけない、ということはありませんが、ネズミに学習される前に駆除するのであれば、多めに使った方が成功確率が上がります。確率の問題です。
ネズミがいやがる臭いの忌避剤は効く?
スプレータイプのものは一時的な効果は高いようです。ただ、人間の居住空間もかなりの臭いになるかもしれません。ネズミ用に限らず、忌避剤はあくまで不確実な「いやがらせ」でしかないため、当店では基本的に使いません。忌避剤でネズミがいなくなるならネズミ駆除業者はとっくの昔にいなくなっています。
超音波のネズミ除けは効く?
今すでにいるネズミを追い出す効果はほとんどありません。新しくやってくるネズミが定着しにくくなる効果はあるかもしれません。超音波もあくまで「いやがらせ」に過ぎず、絶対的な効果は期待できません。超音波でネズミがいなくなるならネズミ駆除業者はとっくの昔にいなくなっています。
まとめ
ネズミは繁殖スピードが速いため、発見したら早めに動き、増える前にできるだけ数を減らす必要があります。そして、駆除を始める時は中途半端に資材を投入するのではなく、最初からしっかりと攻めることが重要です。
ただし、ネズミ駆除は「たくさん罠を置けば勝ち」というものでもありません。「林」のようにネズミの警戒心や行動を考え、「山」のように落ち着いて結果を分析することも必要です。
早く動く。警戒されない。やる時は徹底的にやる。そして、結果を見て冷静に修正する。
これが、駆除業者として考えるネズミ駆除の基本です。
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